お稽古の時に頭を悩ませるのが、茶杓の銘。9月に使えそうな言葉を紹介していきます。
もくじ
季節のことば9月
菊に関わる
重用(ちょうよう)
中国では奇数を陰陽の陽とみなして、9月9日の9が重なる日をもっともめでたい日として祝った。この時期は菊の盛りにあたるので菊の節句と言われた。
着綿(きせわた)
菊におりた露をふくませた真綿で体を拭いて長寿を願うこと。
齢草(よわいぐさ)
菊の異称。ほかにも「勝草/まさりぐさ」「百代草/ももよぐさ」「契草/ちぎりぐさ」などがある。
月を表す
夕月夜(ゆうづきよ)
夕方だけに姿をあらわす月のことで、「小倉山」にかかる歌枕でもある。
望月(もちづき)
満月のこと。陰暦の十五夜の月のことをさす。
有明(ありあけ)
空に月がのぼったまま、夜があけてゆくこと。
月見(つきみ) | 夜半の月(よわのつき) |
湖月(こげつ) | 弓張月(ゆみはりづき) |
三日月(みかづき) | 残月(ざんげつ) |
月影(つきかげ) | 十六夜(いざよい) |
既望(きぼう) | 芋名月(いもめいげつ) |
季節のことば9月一覧
植物
秋の七草(あきのななくさ)萩(はぎ)、芒(すすき)、葛(くず)、撫子(なでしこ)、女郎花(おみなえし)、藤袴(ふじばかま)、桔梗(ききょう)で秋の七草と万葉集では読まれていた。単なる「七草」だと春の季語になる。
白菊(しらぎく) | 藤袴(ふじばかま) |
芒(すすき) | 女郎花(おみなえし) |
齢草(よわいぐさ) | 撫子(なでしこ) |
秋草(あきくさ) | 野菊(のぎく) |
籬の菊(まがきのきく) | 籬の露(まがきのつゆ) |
残菊(ざんぎく) | 雁来紅(がんらいこう) |
動物に関する
秋の蝉(あきのせみ))
立秋を過ぎて鳴く蝉のこと。「秋告げ蝉」という季語もあり、ツクツクほうし(法師蝉)などが泣き始めると夏の終わりがやってくる。
松虫(まつむし) | 赤蜻蛉(あかとんぼ) |
秋茜(あきあかね) | 鈴虫(すずむし) |
初雁(はつかり) | 鬼の子(おにのこ) |
落鮎(おちあゆ) | 遅鮎(おそあゆ) |
虫籠(むしかご) | 虫の音(むしのね) |
虫の宿(むしのやど) | 雁ヶ音(かりがね) |
玉兎(ぎょくと) | 雁鳴く(かりなく) |
小男鹿(さおしか) | 紅葉鳥(もみじどり) |
二季鳥(にきどり) | 雁来(かりく・がんらい) |
時候・情景
桐一葉(きりひとは)
大きな桐の葉が落ちるのを見て、秋のおとづれを感じること。桐の葉は夏から秋にかけて、他の木よりも早く葉が落ちるため。
新涼(しんりょう) | 秋空(あきぞら) |
秋の色(あきのいろ) | 秋の声(あきのこえ) |
秋晴れ(あきばれ) | 秋風(あきかぜ) |
秋の夜(あきのよる) | 清風(せいふう) |
野分(のわけ) | 木枯し(こがらし) |
初嵐(はつあらし) | 黍嵐(きびあらし) |
山里(やまさと) | 故郷(ふるさと) |
霧(きり) | 霧雨(きりさめ) |
霧の香(きりのか) | 朝霧(あさぎり) |
初時雨(はつしぐれ) | 露時雨(つゆしぐれ) |
月の雫(つきのしずく) | 菊の雫(きくのしずく) |
朝露(あさつゆ) | 浦の苫屋(うらのとまや) |
秋日和(あきびより) | 菊日和(きくびより) |
萩の宿(はぎのやど) | 露時雨(つゆしぐれ) |
吟風(ぎんぷう) | 露衣(つゆごろも) |
柴の戸(しばのと) | 天高し(てんたかし) |
柴の庵(しばのいおり) | 白露(しらつゆ) |
風物詩
砧(きぬた)
女性の夜なべ仕事で、麻や楮(こうぞ)の衣類は繊維がかたいので、砧という木槌や杵でうって柔らかくすること。
落栗(おちぐり) | 遠砧(とおきぬた) | 夕ざりの茶(ゆうざりのちゃ) | 笛の音(ふえのおと) |
夜学(やがく) | 鳥おどし(とりおどし) |
案山子(かかし) | 鳴子(なるこ) |
菊重(きくがさね) | 秋の宿(あきのやど) |
秋の戸(あきのと) | 秋苑(しゅうえん) |
秋扇(あきおうぎ) | 忘れ扇(わすれおうぎ) |
月待(つきまち) | 月の庵(つきのいおり) |
その他
地歌に関連
萩の露(はぎのつゆ) |
能に関連
菊慈童(きくじどう) |
ちょこっとメモ
秋茜(あきあかね)…赤とんぼと言われるとお腹の部分が赤いこの種をさすことが多い。秋になると平野に群をなして飛ぶ。
鬼の子(おにのこ)…蓑虫のこと 。清少納言の随筆「枕草子」に「 蓑虫、いとあはれなり。鬼のうみたりければ」とある。
なぜ蓑虫から鬼が生まれるのかといえば、蓑虫が作る蓑笠にヒントがある。国学者の折口信夫は、蓑笠はマレビト(外から訪ねてくる神)のシンボルであり、マレビトの中でも
人間に悪さをしたり、恐ろしい面を持っているものが後に鬼や妖怪に変化したと述べた。
彼岸花(ひがんばな)…赤い花が咲いて散り始めてから、葉が伸びるという特徴的な育ち方をする。球根部分に毒があるため、墓が野犬などに荒らされないように彼岸花を周辺に植えたとされる。別名として曼珠沙華(まんじゅしゃげ)狐花(きつねばな)雷花(かみなりはな)死人花(しびとばな)、捨子花(すてごばな)、毒花(どくばな)、痺れ花(しびればな)、天蓋花(てんがいばな)、狐の松明(きつねのたいまつ)、葉見ず花見ず(はみずはなみず)などもある。
芒(すすき)…薄とも書く。
秋の七草(あきのななくさ)…萩/はぎ、尾花/おばな、葛/くず、撫子/なでしこ、女郎花/おみなえし、藤袴/ふじばかま、桔梗/ききょう。
見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮…「海辺の小さな小屋には、花も紅葉もないわびしい情景である」と歌っているが、あえて無いと言葉にすることによって情景を思い浮かばせている。
玉兎(ぎょくと)…月に住み餅つきをするうさぎのこと。歌舞伎舞踊に玉兎(たまうさぎ)という演目がある。また「月に兎」の対になる概念として「太陽に鴉(からす)」の金鳥(きんう)がある。
浦の苫屋(うらのとまや)…新古今和歌集に収録されている歌で藤原定家の「見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮」からとられた季語。
鳴子(なるこ)…縄に拍子木をつけて鳴らして音を出すしかけ。これで田畑にくる鳥を追い払っていた。
露時雨…露がおりて時雨がふったような様子。
萩の露…地歌・箏曲のひとつ。。幾山検校作曲。
初雁…秋になって北方から初めて雁が渡ってくること。
月の雫…露の異称。
菊重(きくがさね)…女性の着物の重ね方。
雁来紅(がんらいこう)…ハゲイトウ(葉鶏頭)という草花の異称。雁が来る頃に葉が赤くあざやかに色づく。
二季鳥…雁の異称で、秋に渡ってきて春に帰ることから。
紅葉鶏…鹿の異称。
月別の茶杓の銘はこちら!
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