古帛紗や仕覆で使われる布、織り方の種類!わかるともっと楽しい茶道

さけては通れない問答にお裂地の問答があります。
正客の「お裂地は?」の問いかけに、亭主は「エンモンビャッコスザクニシキ」とか「フタエヅルハナカラクサモンヨウキンラン」とか普段は使わない呪文のような言葉が飛び交います。「ビャッコ(白虎)」や「カラクサ(唐草)」や「キンランとかドンスってなんだ?」という疑問は茶道をはじめてまもない頃に誰もが通るはずです。今回は、裂地の名前の仕組みと種類の謎を紐解きます。

裂地の名前のしくみ

名前は色+絵+織り方の順で付けられる

名前のしくみはごく簡単です。さきほどの「エンモンビャッコスザクニシキ」を見てみます。

円文白虎朱雀錦
えんもんびゃっこすざくにしき

円文+白虎+朱雀+
+++織り種類

色は書かれていないので省略、絵は白虎と朱雀が丸い文の(円文)の形になって描かれ、布は錦という織り方で作られているという意味です。

つぎに紺地龍花唐草文緞子を例に見てみます

紺地龍花唐草文緞子
こんじりゅうはなからくさもんどんす

紺地++花唐草+緞子
+++織り種類

と分けて考えます。まず色は紺地なので紺色、絵柄は龍と花唐草(この裂地は牡丹ですが、花はその時により違います)、そして布の織り方は緞子という
種類になります。

この裂地は名物裂地の1つで、紹鴎緞子という名前がついています。他にも遠州緞子や定家緞子のような名物裂地も色+絵+織りの種類の3つに分けて考えることができます。また最初の色は特に書かれていないことがよくあります。

絵柄は膨大な数が作られていますが、織り方の種類は大まかに8種類になります。今回は代表的な4種類をご紹介します。

間道(かんとう)

特徴:しま模様やにじんだ絣(かすり)模様

間道はごく簡単にいうとボーダー柄です。ただ、種類は多く

  • 経縞(たてしま)
  • 横縞(よこしま)
  • 格子縞(ハウンドトゥース)
  • 絣(かすり/模様の輪郭がぼんやりとにじむ)

の4種類にだいたい分けることができます。
間道は日本でも古くから見られる織り方で、有名なのは飛鳥時代の法隆寺伝来の太子間道という絣柄で、聖徳太子の褥、幡といった服地に使われました。

桃山時代の南蛮貿易で東南アジアや中国の南からもたらされた裂地の多くは木綿です。

ただ、名物裂地は絹糸で作られたものが多いので、東南アジアではなく中国の広東からの舶来品だと考えられています。

間道は、広東、漢東、漢島、漢渡などの当て字があります。

織り方:規則正しく1本づつ編む平織り


間道は縦糸と横糸を交互に織る、平織りで作られています。シンプルな作りのため、布地は頑丈で軽く通気性が良いのが特徴です。
現代ではギンガムやオーガンジー、タフタなどを作る時に使われる織り方です。

緞子(どんす)

特徴:同系色2色の抑えた色あい

茶の湯の広がりとともに、中国の明から盛んに輸入された緞子。

主な特徴は

  • 布に深みのある光沢
  • 縦と横の色は同系統の2色(たとえば青と水色など)
  • 大きい絵柄でも上品な印象
  • 金箔糸で模様をつけると金襴緞子

抑えた色合いと光沢から、多くの茶人がその織物を好み、茶人や僧侶、大名の名前がついた名物裂地が多くあります。

名物の中でも、五種緞子と呼ばれるものは有名なので名前はおさえておきましょう。

(五種緞子:白極緞子/正法緞子/本能寺緞子/宗薫緞子/下妻緞子)

織り方:糸を5本飛ばしで織る繻子織


緞子は多くは絹糸を使い、繻子織とよばれる表地に経糸または横糸が多く現れた織り方でおられます。

縦糸と横糸を5本飛ばして織るため、表地には裏糸がほとんど見えません。

糸の密度が高いため、光沢が強く厚みもでますが、やわらかな風合いをたもっているのも魅力です。

摩擦やひっかきには弱い特徴があります。ただ名物裂地のなかには平織や綾織のものが多く、昔は経糸と緯糸の色合いが異なる高級な織物をまとめて緞子と呼んでいた可能性もあります。

現代ではサテンと呼ばれる生地を作る時に織られ、ドレスやジャケットの裏地などで使われています。

裂地の種類

錦(にしき)

特徴:多色づかいで華やかな文様

2色以上の色糸で作られた布地が錦で、歴史は古く、中国の漢の時代(紀元前)には織られていました。日本では飛鳥時代から盛んに織られ、平安時代には国内産を倭錦(やまとにしき)、唐からきた織物は唐錦と細分化されていきました。主な特徴は

  • 多色づかいの華やかな文様
  • 使用する色糸が多いため、布が厚くて丈夫
  • 仕覆や挽家袋など多くの茶道具に使われている

になります。

織り方:糸を3本飛ばしで織る綾織


錦は綾織という糸を何本か飛ばして織っていく裂地です。
綾織で織っていくと縦糸と横糸の交点を少しずつずれていくため、裂地に斜めの線が出てくるのも特徴です。平織よりも柔らかな手触りで、シワがよりにくく、現代ではデニムやフランネルが同じ織り方で作られています。
また文様の出し方には種類があり、経錦(たてにしき)と緯錦(よこにしき)の2種類があります。経錦は縦の色を変えて模様を出す方法で初期はこちらが主流でした。ただ経錦は機織り機にセットする関係上、使える色数に制約があり、大きな文様を描くことができませんでした。これらの問題は緯錦と呼ばれる横糸の色糸を変えて織ることで解決され、以降は緯錦が主流となりました。

金襴(きんらん)

特徴:金糸を使って絢爛豪華

錦の一種で、金箔の糸で文様を織ったとても豪華な織物です。これも当初は中国からの輸入品で、日本では室町時代の終わりに大阪の堺で国産化がはじまり、京都の西陣でも盛んに生産されました。

武士や禅寺でよく用いられたので、寺社の名前がつけられたものが多いです。

金蘭の由来は、中国の宗でお坊さんの着る袈裟が金蘭衣と呼ばれていたと服の呼び名が元になったとか、輸入した禅僧の金蘭衣に金箔が練り込んであったからと材料が元になった説などがあります。

綾織の布に平金糸を織り込む

金襴は基本の地布は錦と同じ綾織で織られます。そこに平織りで金箔糸を織り込んで作られ、金箔の折り込みかたにも種類があり、文様のあるところだけに金箔糸を縫い込み縫取りと、文様のないところにも金箔糸が通してある全通に分かれます。

全通は横一本まるまる金箔糸と通す方法で、表の文様があるところは金で、裏は文様のない部分が金になっています。

縫取りは表の文様のある部分だけに金色があり、裏がえしても金箔糸は通っていません。

裂地のまとめ

まったく初めての方でもわかりやすいように説明してみたのですが、いかがでしたでしょうか?
と下にごく簡単なまとめを書いて終わりにしたいと思います。

  • 裂地には間道、緞子、錦、金襴の種類に分けられる。
  • 間道は横しま、縦しま、格子、絣の柄があり、平織りで作られる。
  • 緞子は同系色の2色が基本で、抑えた光沢と厚みが特徴、織り方は5本とばしの繻子織。
  • 錦は多色づかいで、3本飛ばしの綾織。
  • このほかにもモールとか風通(ふうつう)とかがありますので、また紹介していきたいと思います!
    それでは、ワクワク楽しい茶道ライフを!

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